第21章 発情期
なんで、あんな事を聞いてしまったんだろうか。
好きな子としかしない、そう言っていた木兎さんが私に触れる手は、求めていたものだと確信したい。
でも、ただそれだけの気持ちで聞いてはいけなかった。
ちゃんと告白されたら困るのはこっちだから。
この人が、気持ちを向ける相手にこんな顔で、こんな声で喋って、こうやって触れるのだと。
知りたいだけで、付き合うとかは考えてない。
木兎さんを好きだとは思うけど、恋愛感情的な好きじゃないのは、分かっている。
自分を想ってくれない人と関係を持つのが辛いと知っているこの人を、私の興味だけで振り回すなんて出来ない。
「…木兎さん、あの…。」
「言うな!分かってるから。りらちゃんが謝んな!」
謝罪して、止めて貰おうとした声はかき消されて。
抱き締める力だけが強くなっていく。
「りらちゃん、いつか俺だけのもんにしてやるから。」
耳元で、低く囁かれた。
今答えを出せ、という告白ではない。
でも、気持ちだけは伝わる言葉。
腕が緩んで、少し離れて見えた木兎さんの顔は、いつも通り屈託なく笑っていた。
「もう、木葉も応援してやんねー!ライバルだかんな!」
勝手な宣言をしてベッドから降りていく。
離れてしまう温もりが惜しくて、手を伸ばしたけど掴まずに止めた。
応えないなら、掴んではいけない。
木葉さんにしたみたいな、期待させて手放さない。
そんな狡い真似を真っ直ぐな木兎さんには出来なくて、部屋から出ていく姿を見送った。