第21章 発情期
誰も言い返してはこない。
重い沈黙が部屋の中に漂っている。
「…姉ちゃん、ごめん。私が頼んだの。実家に顔出すように説得してくれって。
まだ帰りたくないなら、父さんにも母さんにも、ここに住んでる事は言わない。私が言っても信じないと思うけど、2人とも姉ちゃんの事を心配してる。落ち着いたらで良いから連絡して。」
沈黙を破った妹の声。
この状況の中に居辛くなったのか、言うだけ言って妹は今度こそ家から出ていった。
フォローなんかしても、遅い。
一応でも数ヵ月は同じ家に住んだ私の嫌がる事を、数時間話しただけの妹に頼まれたくらいでしたのか、理解が出来ない。
結局、自分が良いと思った事を押し付けてくるって証明だろう。
信用なんか、もうしない。
妹がいなくなった事で緩んだ赤葦さんの腕から抜け出す。
ポケットから財布を取り出して、中身のレシートやら領収書の計算を携帯の電卓で始めた。
私が何故そんな事をするのか分からず、困惑した様子で話し掛けてくる声が聞こえるけど、全て無視する。
計算が終わった所で、3人分のお金を取り出してテーブルに並べた。