第21章 発情期
勿論、気付いていたのは妹だけではない。
赤葦さんは力付くで木兎さんから私を引き離した。
逃げられないように背中側から強く抱き締められている。
「木兎!抜け駆けは禁止だ!」
「なっ!今のはりらちゃんから頼まれたんだろ!お前等は妹ちゃんと仲良くしてろよ!」
私の視界から木兎さんを奪うように、間に黒尾さんが立った。
「…りら、木兎さんがいくら単純って言っても、ホントに添い寝だけで済むと思ってるの?」
横から降ってくる月島くんの声。
添い寝だけで済ませようと思っていないのは私の方だと分かっているクセに、この言い方。
この人達に対する苛立ちはピークに達した。
「赤葦さん、離して下さい。」
「離したら木兎さんの所に行くから駄目。」
「黒尾さん、止めて下さい。」
「…お前な、気軽にそういう事をすんなっての、まだ分かってねぇの?」
「月島くん、分かってて、なんでそういう言い方するの。」
「りらがあまりにも分かってないからデショ。」
誰か1人でも気持ちを汲んでくれれば良いと、少しだけ期待して淡々と言葉を吐く。
期待が砕かれるのは予想した通りだった。
「皆さん、私の家族と同じですね。…自分が良いと思った事を押し付けるばかりで、私の話なんか聞かない。嫌だ、と言っても意味なんかない。」
どうして、私はこの人達を信用してたんだろうか。
話を聞いてくれる、理解しようとしてくれる、護ってくれる、なんて。
自嘲を含んで口元が笑みに歪んだ。