第21章 発情期
木兎さんは、あの3人に口で敵う筈もないのに私の為に言い争ってくれている。
たった一人でも、味方をしてくれる。
それだけで、充分だ。
「…木兎さん、もういいです。明日、実家に行きますから。」
話を止めるように腕を軽く叩いて顔を上げた。
顔が近くて、こんな状態なのに一度は治まった筈の悩みの種が目を覚ます。
「無理すんなよ。」
心配そうに見る目が、護るように抱き締めてくれる腕が、私の求めていたものであるような気がして、離れたくなくなった。
「…一つ、お願いがあります。良いですか。」
心配するな、と首を振って我儘を言う前置きをする。
内容も確かめず、了承するように頷く木兎さんはやっぱり少し頭が足りない気がした。
「今夜、ずっと一緒にいて下さい。」
その発言で、空気が固まったのが分かる。
「お、おぅ!りらちゃん、淋しいと1人で寝たくないんだな。」
数秒遅れての返事。
それは、この家に来たばかりの私が頼んだ事と同じと判断した言葉。
「…ぼっくんって、鈍いんだねぇ。」
ただの添い寝をお願いした訳ではないと気付いている口振りの妹の声が静かな部屋に響いた。