第21章 発情期
ただ、私が勝手に信用していただけだ。
ショックを受けたって、皆には関係がない。
怒ったり、悲しんだり、そんなものを見せても意味もない。
「分かりました。明日は実家に妹を連れて帰ります。」
不機嫌なのが伝わらないように笑顔を作る事はなく、ただ従うと示すように頷いた。
もう、どうだっていい。
両親に会って、何か言われても今ほど辛い思いはしない筈だ。
「…お前等、なんか変だぞ?りらちゃん、嫌がってんの分かってんだろ?」
木兎さんが不審そうに眉を寄せて、私の腕を引いた。
体からは力が抜けていて、簡単に木兎さんの胸元に倒れ込む。
「木兎さん、あまりりらを甘やかさないで下さい。」
「甘やかしてねーよ。妹だけでも嫌がってんのに、親に会わせるなんて可哀想だろうが。」
「…あのな、ない頭でも少しは考えろよ。センパイと違って親も生きてんだし、今の内に話しておかねぇと何時か後悔するの、りらだぞ?」
「…でも、‘今’じゃねぇよ。こんな嫌がってんのに無理に会わせても解決しねーだろ。」
「ソレ、木葉さんに無理に再会させた木兎さんの言うセリフなんですか?」
「…ぐっ!で、でも!ソレは上手くいっただろ?」
両腕にしっかりと抱かれてしまって周りは見えないけど、声だけは聞こえていた。