第21章 発情期
体格差があった子どもの頃から双子のように似ていると言われている。
身長差も殆どない今は、私の方が髪が長いくらいだ。
もし、間違われたらショックだし、居座る理由を作ってしまう。
「私がそのバカげたゲームに付き合うと思ってるの。」
なんとか止めようと、嫌だという雰囲気を出した。
「姉ちゃんは付き合うよ。…コレ、欲しくない?」
そう言って鞄から取り出されたのは、青地に白の細い斜線柄が入ったネクタイ。
梟谷出身の2人は見覚えがあるだろう。
「梟谷の制服、だな。何でお前が持ってんだ?」
「…りらが梟谷出身だからですよ。後は察してやって下さい。」
「女子はリボンだったろー?」
「後で説明します。」
木兎さんは不思議そうにしているけど、赤葦さんは気付いたようだ。
その話で、黒尾さんも月島くんも分かっただろう。
ネクタイの元の持ち主が誰で、私が実家に置いてきた物であるという事は。
「ゲームに勝ったら、コレも返すよ。感謝してよね、父さんが姉ちゃんの私物整理してた時に死守してあげたんだから。」
「きとりちゃんに恩でも売る気だったんでしょ。」
「ピンポン。姉ちゃんの大事な物、盾にしたら逆らえないよね。」
ケラケラと笑う声に虫酸が走る。
こんな事をしたら、ゲームに勝っても住み辛くなるなんて分かりそうなものだけど。
「さて、姉ちゃん。きとりちゃん家ってアルバムあったよね。」
「そりゃ、どこの家でも大体あるでしょ。」
「オジさん、私達の写真は別に取っておいてくれてたじゃん。ソレ、持ってきて。」
「自分が言い出したゲームでしょ。」
「私がこの家、探し回って良いの?荒らすよ?」
本当に人を苛々させるのが得意だな、このコ。
聞こえないように小さく舌打ちして立ち上がった。
「あ、ぼっくん。一緒に行ってあげてよ。アルバムって結構重いし。」
「何で俺なんだ?」
「ぼっくんが一番頼りになりそうだから。」
人を動かすのも得意なようで腹が立つ。
木兎さんが一番動かしやすいのも見抜いてる。
昔から人に媚びるのは私の数倍上手かったよな。
喜んで立ち上がった木兎さんと一緒にリビングから出た。