第21章 発情期
こうなると、その後は恒例の飲み会になる。
発案は勿論、木兎さんだから全員強制参加。
皆も学校は夏休みに入っているから時間の余裕はあるようで、止めようがなかった。
私がキッチンで用意をしている間に、木兎さんとは打ち解けたようだ。
空気を読まない単純思考同士だからウマが合うんだろうな。
他の3人は、というと。
私の諦めの早さから何かに感付いているようで警戒していた。
当の本人は気付いていないようで、呑気に酔っ払っている。
「妹、酒に弱いの?」
「知りません。最後に会ったの、2年以上前なので。」
「りらと似てるのは顔だけだな。」
「…よく言われます。」
「だろうね。これだけ似てても間違えようがないよ。」
ノリ良く話す酔っ払い2人は構わず、私は私で他と会話していた。
妹登場、なんて驚きのイベントがあったからか、最近の悩みだった症状が出ない。
「ねぇ、ぼっくん。ちゅーしよ。」
普通に話せるようになって安心していた私の耳に飛び込んできた言葉。
そちらを見ると、木兎さんに迫っている妹がいた。
今度はお前が発情期か。
木兎さん、ノリでキス出来る人だからな。
簡単にしちゃうだろうし、自分と同じ顔のキスシーンとか正直見たくない。
顔を逸らそうとしたけど、その必要はすぐになくなった。
木兎さんが、妹の口を手で塞いでいる。
「駄目だ。俺が好きなの、りらちゃんだから。」
「姉ちゃん好きならいーじゃん。顔は同じだしー。」
「…ドコが同じなんだ?」
木兎さんの手から逃れて粘っても、拒否の姿勢は変えなかった。
その言葉に妹の顔が変わったのが分かる。
嫌な予感しかしない、企み笑顔だ。
「…ふーん。じゃ、ゲームしようよ。そっちの3人サンも私と姉ちゃん、間違えようがないって話してたよね?
私だってバカじゃないし、歓迎されてないのは分かってる。だから、負けたら今日だって泊まらないで帰ってあげる。」
分かってるなら今すぐ帰って頂きたい。
口に出したって無駄だからそれは抑えておいた。