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第21章 発情期


現在の時刻、夜10時前。
普通なら人が訪ねて来る訳のないだろう時間。

電話の事を考えると、訪問客が誰かは必然的。

「…取り合えず出るわ。」

黒尾さんが玄関に向かうと同時に隠れようと立ち上がった。
キッチンの方へと足を向けたけど、前には進めない。
木兎さんに手を掴まれていた。

「りらちゃん、俺は約束守るぞ。」

今まで何回この言葉に救われたか分からない。
だけど、今回は違うんだ。
妹と私じゃ、喧嘩にすらならない。

「…あ、やっぱいたー。姉ちゃん、久し振り。」

黒尾さんに連れられてリビングに入ってきた女は、最後に会った時と変わらず私と同じ顔をしていた。
よく笑い、よく喋る、愛想の良い私なんだ、彼女は。

皆は驚いたようで、私と妹を比べるように交互に見ている。

「…双子?」
「違うよ。学年一緒だけど。姉ちゃん4月生まれ、私は3月生まれの年子。」

誰から発された質問か判断する前に、妹の方が勝手に答えている。
姿を見られたからには逃げても隠れても仕方がないと悟った。

「何しに来たの。」
「家出。母さん、酷いんだよ?姉ちゃんは、あぁやって出ていったら絶対に家に迷惑掛けないけど、私は出戻って迷惑掛けるとか言い出してー。私と姉ちゃんを今でも比べてんの!」

実際、その通りになるような気がしてならない。

周りの皆は、私達の会話を黙って聞いていた。
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