第21章 発情期
聞こえていない事を願って皆を振り返る。
「今、姉ちゃんって聞こえたケド?」
「りらちゃん、妹いたのか?」
「話さなくて良かったの?」
願いは虚しく、完全に聞かれていた。
さっきとは違った方向で質問が飛んでくる。
これはこれで、答えたくなかった。
また、電話が鳴る。
今度は取らない。
一度切れても、数秒後にはまた着信。
「…黒尾さん、出て貰えますか。」
「なんで黒尾なんだよ。」
「適任かと。きとりちゃんの彼氏とでも言って誤魔化して頂けそうなので。」
「…内容によっては、そうしてやるよ。」
溜め息を吐いて黒尾さんが立ち上がった時、電話が切れた。
数分しても、掛かって来ないから安心したけど、状況は宜しくない。
親と不仲なのは言っていたし、家族の話なんかした事はないから妹がいたのも知らなかったんだろうな。
嘘を吐いていた訳でも、隠していた訳でもないけど、最近避けていた事と合わさって皆の機嫌は悪そうだ。
「…ご質問をどうぞ。」
逃げようとしたって無駄だし、かと言って何から話せばいいか分からないし。
聞かれれば答えようと覚悟を決めて促した。
「りらの家族構成は?」
「父、母、妹2人と弟。」
「さっきの電話の相手は?」
「上の妹。」
「なんで切ったの?」
「前にお話ししましたけど親と絶縁状態なので。妹とは話すなんて都合の良い真似出来ません。」
質問は途切れない。
避けていた事については忘れてしまったかのように聞いて来ないのが幸いだ。
質問されて答える。
それを繰り返している中にインターフォンの音が響いた。