第21章 発情期
何をどう説明すべきか、どう誤魔化そうか考えていると電話が鳴る。
この家の固定電話だ。
「ちょっと、失礼します。」
家に用事があるなら、一応でも家主(代理)は私だ。
電話には出なきゃならない。
立ち上がって、電話に近付くと受話器を取った。
『あ、出た。きとりちゃん?』
電話の相手は、私がよく知る声、血の繋がった妹だった。
声を出したら、私がここで暮らしているのがバレてしまう。
実家に関わりが出来てしまうのが嫌だ。
「りら、セールスとかなら切らねぇとしつこいぞ。」
迷って黙ったままでいると、後ろから黒尾さんの声が聞こえた。
『りら?…って、姉ちゃん!?』
その言葉は受話器を通って相手にまで聞こえたようで、電話口から音が漏れるくらいの大音量で叫ばれる。
「番号をお間違えです。」
慌てて受話器を置いた。