第21章 発情期
木葉さんとの一件以来、私はおかしい。
あの日の翌日、夜には普通に電話が掛かってきた。
私が望んだ通り、友人としての会話をしていた。
声を聞いている内に、あのキスの事を思い出して体の奥が熱くなった。
女にも性欲はある訳で、これが木葉さん相手だけなら、また私はあの人に恋したってだけの話で済むんだけど。
対象が、周りにいる皆にまで及んでいるから問題だ。
喋っている時、食事の時、たまに一緒にお酒を飲んでいる時。
唇や首筋、シャツから覗く鎖骨、大きな骨ばった手。
それを眺めては背中がゾクりと震える。
ゲームとか、ごっこ的なお遊びでは皆に触れた事があった。
それはあくまでノリの一環で、気持ちは伴っていない。
気持ちのある相手に触れる時は、どんな声で喋って、どんな顔をするんだろうか。
そんな事ばかり考えてしまって、皆を避けるようになった。
普段なら、リビングかキッチンで殆どを過ごす私が、食事を作る以外は部屋に籠りっぱなしなんて変に思われるのは分かっていた。
案の定、避け始めて1週間程した頃、食事の片付けを終わらせて部屋に戻ろうとした時、捕まった。
体格の良い男4人に囲まれて逃げられる訳はない。
誰か一人に気付かれて、部屋を訪ねられるよりはマシだと思った。