第20章 理解者
黒尾さんが黙ってしまった。
お礼の意味が分からなくて考え込んでしまったのか。
いや、鋭い黒尾さんの事だから、それはない。
多分、嬉しかったのを言葉にして、説明下手な私が言い切れなかったのも分かってる筈だ。
じゃあ、何故こんなにも私をただ見つめているのだろう。
気まずくなって缶の中身を飲み干すと立ち上がる。
「そろそろ寝ます。お休みなさい。」
「おー。オヤスミ。」
缶を片付けてリビングから部屋へと戻った。
あまり長く一緒にいると、視線の意味を聞いてしまいそうだ。
聞いても、それは誤魔化すタイプだと分かってるけど。
他にも、黒尾さんに答えを求めるべきじゃない事を喋りそうだったのもある。
木葉さんとのキスは、今までとは違って、唇が熱くて、思い出すだけで顔まで熱を持つほどで。
私は恋愛の意味で彼を好きなのか、と。
なんで、そんな事を喋りそうになったのか。
きっと、私を理解してくれている黒尾さんなら、答えをくれそうな気がしたからだ。
でも、これは私が考えて答えを出さなきゃいけない。
そうしないと、木葉さんにも失礼だ。
解決してない事もあるけど、自分を狡いと思っていた嫌悪感は抜け落ちてくれたお陰で随分と気持ちは楽になって、その日はよく眠れた。