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第19章 失敗


赤葦さんの指摘によって腕から解放された途端、体を支えていた手が滑って椅子から落ちた。

「わー!りらちゃん、ごめん!!大丈夫か?」

木兎さんが慌てて椅子から立ち上がり、私の手を掴んで引っ張る。

だから、力が強いんだってば。
痛い、ついでに叫ぶように言われた謝罪が五月蝿い。
本当に雑だな、この人。
でも、ご機嫌は持ち直したみたいだから、余計な事は言わないでおく。

力に従って立ち上がり、椅子に戻ると目の前には座り直している赤葦さん。

さっきのは悪ふざけにも程がある。
木兎さんの機嫌を直す為にしたって、あれはない。

「傷心なら、それなりの慰め方をしようと思っただけだよ。」

睨むように視線だけを送っていると予想外の言葉が出てきた。

月島くんもそうだけど、私がフラれた、って勘違いしているようだ。
そんなに、傷付いている顔をしている覚えはないのに。

「木兎さんのご機嫌とりじゃなかったんですか。」

木葉さんの件には触れず、横目で木兎さんを見る。
すっかり立ち直ったその人は、こちらの話の内容が掴めていないのか首を傾げながら缶に口を付けていた。

「半分は。りらに手出したら、いくら不機嫌でも止めるだろうしね。」

半分は?
では、後の半分はどういった意味だ。
さっき言っていた慰めのつもりか。

考えを読もうとしても、分かる訳もなく。
聞こうとする前に教材を持って部屋に戻ってしまった。
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