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第19章 失敗


赤葦さんがいるなら、木兎さんの世話は向こうの役目だ。

「…そういえば、りらは和食が専門みたいだけど、お菓子とかは作らないの?」
「レシピがあれば作れる、程度ですね。お菓子の類いは、分量とか細かいので得意ではないです。」

何の脈絡もない会話が始まった。
赤葦さんの視線が、木兎さんに一瞬だけ向いたから、ご機嫌とりの一環だろう。
質問に答えると驚いた顔をされた。

「りらの料理って目分量でやってるの?」
「えぇ、まぁ…。でも料理人ってそんなもの、ですよ。テレビとかの料理番組で出る分量なんて目安で、味には好みもありますし。
調味料一つ一つメーカーまで揃えたって、同じ味のものは二度と出来ないです。なるべく、近く、同じに感じられるものを作るのがプロ、ですよ。」

料理についての話になると、私の口は饒舌になる。
好きな分野の話に食いつくのは仕方がない事だ。
アテが外れたようで、赤葦さんが黙った。
上手く乗れなかったようで申し訳ない。

木兎さんの方はというと、食べ物の話ならつられるようだけど、料理自体には興味がないのか、完全に拗ねて面倒臭い状態になっていた。
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