第19章 失敗
元からあまり無駄話をする訳じゃない私達の間には沈黙が流れる。
「…飲みますか。」
「りら、まだ飲む気?」
静か過ぎる状態から抜け出そうと持ち掛けてみたものの完全に呆れられた。
少し間をおいて、諦めたような息を吐いている。
「…一本だけなら付き合うよ。」
人差し指を立てて数を示す姿を見て立ち上がると、冷蔵庫から缶のアルコール飲料を差し出した。
飲み始めても、やっぱり無言の時間は続き、会話がないまますぐに缶の中身を飲み干す。
もう部屋に戻ろうかと立ち上がった時、リビングの扉が開いて風呂上がりの木兎さんが入ってきた。
「ビールっ!ビールっ!」
やけに楽しそうな声と共に冷蔵庫の方へと近付き、当たり前のように缶ビールを取り出している。
「りらちゃん、何か飲むか?」
「何でも良いので、お酒取って下さい。」
「赤葦は?」
「俺はこれ一本で良いです。」
冷蔵庫前からの質問に、答えてもう一本飲む理由を手に入れた。
木兎さんが私の隣に座って乾杯の音頭をとる。
すでに一本飲み終わった後の私と、飲みかけている赤葦さんはノらずに飲み続けた。
「ノり悪ィよ、お前等。」
「逆にノりの良いりらを見てみたいくらいっスよ。」
「…無理な相談です。」
「二人が冷たい…。」
「「元々です。」」
ぶつぶつと文句を言い出した木兎さんに口々に言い返すと少し落ち込み始める。
もう私がご機嫌を取る必要もないから放っておいた。