第2章 明くる日
鞄から数着の服やポーチを出し、一番底の部分に入れていた新聞紙で固く包まれた三本の包丁を取り出す。
きとりちゃん以外の4人には完全に引かれていた。
「服は捨てても、ソレは捨てないのね。」
「職人の命だよ。包丁は。」
きとりちゃんと簡単な会話をして包丁を手にキッチンに戻る。
「包丁持ち歩いてるとか怖いんですケド。」
「ツッキー、今の聞いてなかった?りら、職人目指してるのよ。主に和食の。板前さんって言うのかな。」
後ろで何やら自分についての話が繰り広げられていたのは分かったが、火を使い始めるとパンの焼ける音や換気扇の音で次第に聞こえなくなった。
そうして出来上がったフレンチトーストと、買ってきたレタスを同じ皿に盛ってリビングに戻る。
テーブル脇の椅子に座っていたきとりちゃんの前に皿を置いて月島さんを見た。
「月島さんの朝食だけ聞いてませんでしたけど、コレと同じで良かったら作りますよ。」
「いや、僕はそろそろ出るので。」
「はいはーい!俺が食うー!」
「木兎さん、今さっき焼肉弁当食べたばっかでしょう。」
「木兎の胃は底無しだな。あ、余裕あったら俺のも。」
「黒尾さんも底無しじゃないスか。」
「朝食わないと頭働かないだろ。」
月島さんに問い掛けたのに木兎さんが口を挟むし、赤葦さんが突っ込むし、黒尾さんまで出てくるし。
頼むから一人ずつ喋ってくれないかな、この人達。
わいわい話し始める皆を放って再びキッチンに入った。