第2章 明くる日
早朝のコンビニは空いていて、手早く買い物を済ませて家へと戻るとリビングには誰もいなかった。
広いリビングからカウンターを挟んで続くキッチンに入って買い物袋を置く。
頼まれていた弁当を分かりやすい位置に置いて、フレンチトーストを作る準備をしようと戸棚を開けた。
食器はあるし、道具も色々と揃ってはいるが使われている形跡が殆どない。
コーティングされているフライパンや鍋、プラスチック製のボウルなんかは無事だけど包丁とかは錆びていた。
包丁が錆びるとかどれだけ放置されてたんだ。
どんな食生活してたんだ、あの人達は。
呆れが多分に含まれた長い溜め息を吐いて、使う用具を取り合えず一旦洗ってから作業を始める。
調理を進めているとリビングの方に人が戻り始めた。
話し声もあるし、弁当を手にとってカウンター上の電子レンジを使う音が聞こえる。
雑音は気にせず、パンを液に浸そうと袋を開けた。
「あ、食パンの耳は取ってね。」
いつから覗いていたのか、カウンターに肘を付いてこちらを見ているきとりちゃん。
「包丁、使える状態に見えないんだけど。」
棚から錆びたそれを取り出して見せた。
「アンタ、持ってるでしょ?」
「…あぁ。」
言われて思い出したように錆びた包丁を置いてキッチンから出ると、自分の荷物に近寄る。
リビングの方にはすでに皆揃っていて、私の行動が気になるのか視線が集まった。