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第19章 失敗


赤葦さんが、こちらを向く。
首をゆるゆると振って、何かを否定したいようだ。

「気遣わないで良いよ。一人でやりたかったら、部屋でやるから。」

席を外さなくて良い、って意味だったか。
言葉として出されるまで、全然分からなかった。

「…少し、話し相手して貰える?」

テーブル上に広げていた物を重ねているのを見て、頷いて座り直すと、少しだけ笑ってくれた。

「…手、どうかした?」
「包丁で切りました。」
「それ、料理出来なくなった原因?」
「まぁ、そうですね。」

視線で怪我をした指を示された。
料理をしなかった直接の理由は、黒尾さんに怒られたからなんだけど、その原因は間違いなく指を切った事だから頷く。

「りらが料理中に失敗するなんて、明日は槍でも降るかもね。」

雪の次は槍ですか。
有り得ない事を例えているんだろうけど、私だって料理中に怪我をする事だってある。
ただ、この怪我は‘木葉さんと何かあった’と示しているようなもので。
多分、どこまで聞いて良いか分からずミスを指摘する事で様子を見ているんだろう。

今までだって、そこまで完璧にこなしていた訳じゃないし、火傷とかしょっちゅうしてるのに、今回は誰も見逃してくれないようだ。
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