第19章 失敗
色々と考えたけど、私がまた恋をするには時間が必要だ。
今はまだ、私を大切にしてくれている皆の中にいたい。
「りらちゃん、抱き締めていいか!」
「…嫌です。」
何が嬉しかったのか満面の笑顔で両腕を広げる木兎さん。
珍しくわざわざ許可をとりにきたから、それは断った。
「嫌でも抱き締める!」
そんなもの、意味がないのだと分かってはいたけど。
立ち上がって私の隣に座り直し、無遠慮に抱き付いてきた。
結構な力を込められていて痛いし苦しい。
悲鳴もあげられないまま、その状態でいると、月島くんが帰ってきた。
リビングの扉を開けた途端、私達を見て完全な作り笑いを浮かべ、扉を閉め直す。
勿論、本人は廊下側に残っていて、見てませんよ、とでも言うような行動だった。
「木兎さん。いい加減離して下さい。」
なんとか声を出して木兎さんから逃れると扉を開ける。
廊下には月島くんがまだいた。
「なぁんだ。もうちょっとやってれば良かったのに。どーせ、木葉さんにフラれて慰めて貰ってたんデショ。」
「…違う。」
フったフラれたで言うならフった方だし。
そもそも、ちゃんとした告白はされてない気がする。
好きだ、とは言われてない。
いや、そうじゃない。
今話すべきはそれじゃない。
「私は木葉さんと二人きりより、皆といたいって話をしたら。」
「あぁなった、と。まぁ木兎さんだからね。」
思い直して理由を説明すると、最後まで言う前に台詞を取られた。
「よっしゃー!ツッキー帰ったし、焼き肉行くぞー!」
月島くんと話していると後ろから飛び付かれる。
重みと勢いで、目の前に倒れた。