第19章 失敗
いなくなったら、作ろうと思ってたけど、バレたら怖い。
やる事がなくなってしまって、暇になったのでテーブル脇の椅子に座った。
テーブルを挟んだ反対側には木兎さんが座っている。
先程の黒尾さんが相当怖かったのか、少し落ち込み始めていた。
「木兎さん、焼き肉でも食べに行きますか。…たまには贅沢しましょう。」
「…肉?マジで!?」
木兎さんは本当に単純で、食べ物の話で目を輝かせた。
私の財布には痛手だけど、しょぼくれられるよりはマシだ。
「じゃ、ツッキー帰ってきたら行こうぜ!」
「…赤葦さんは?」
「赤葦、今日はダチと飯ってメール来た。」
「…げ。」
木兎さんを止められる赤葦さんがいないのは辛い。
本音が小さく漏れたけど木兎さんには聞こえなかったようで、目の前で一人テンションを上げている。
「…そういえば、飲み会どうしたんですか。」
「…あ、あー…。りらちゃん、怒らない?」
気になっていた事を問い掛けると、テンションを若干下げて目を泳がせる。
「あれな、嘘。」
怒る前に驚いた。
いきなり話に巻き込まれたような状態だったのに、咄嗟に嘘を吐けるような人だと思っていなかった。
でも、何故嘘を吐いたか分からない。
「何でそんな嘘を吐いたんですか。」
「りらちゃん、木葉んトコ行きたかっただろ?あのまま、俺が黒尾と一緒になって止めたら出掛けられなくなったかもしんねーじゃん。」
その理由にまた驚く。
この人は私と木葉さんにどうにかなって欲しいのだろうか。
「俺な、りらちゃんが幸せならそれでいい。だから、りらちゃんが木葉といたいなら応援するって決めてんだ。」
疑問は勝手に話を続ける木兎さんによって解決していくけど、私自身としては…。
「木葉さんと二人きりでいるより、皆さんといたいです。」
これが本心だった。