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第18章 オトモダチ、から


きっと、この人はオトモダチに戻らない。
私の事を考えた上で、連絡を断ってしまう。

気持ちに応える事は出来ないのに、失いたくないなんて我儘は言えない。
無駄に期待させず、自然に数日前までの、ほぼ毎日でも連絡をしていた間柄に戻るのは不可能だ。
分かっているのに、繋ぎ止めようなんて考える私は狡い。

「駅で別れたらオトモダチに戻る、のが約束。まだ別れてないから、りらは俺の彼女。俺は、ズルいね。」

不意に聞こえた声、それと同時に繋がれた手が離れて腰に回った。
腕に引き寄せられて、向かい合う形で抱き締められる。

「彼女のフリ、してくれてんなら、別れを惜しむシーンまで付き合ってくれてもイイだろ?」

軽い口調で、まるで冗談のように言う顔は、私の一番見たくない苦しそうな笑顔。
高さの変わらない、その顔が近付いてきて、何をされるかはすぐに分かった。

公衆の面前で、学生カップルでもあるまいし、何をしているんだろうと思う。

それでも、私は拒まなかった。
自分が、木葉さんとキスをしたいと思ったから。

逃げない、避けない、私を至近距離で観察するように見て、一瞬だけ唇を触れ合わせて、すぐに離れる。
私を抱き締めていた腕も緩んで、向かい合って立った。

「ズルい男でゴメンね。」

また、私の見たくない顔。

本当に狡いのは、私の方だ。
期待させずに友達に戻る事が出来ないなら、期待をさせて手放さない方向に持っていこうとしている。
応えるか、分からないのに…。
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