第18章 オトモダチ、から
駅まで歩く中で、木葉さんは独り言のように話をし始める。
「あん時…卒業式ん時、俺が逃げなきゃ、お前の言葉の先を聞いてれば、‘必要ない’の意味を確かめてれば、本物になれたかね。」
「…えぇ、きっとなっていたと思います。」
「曖昧かよ。」
問いが混じったような言葉に頷いて返した。
ただ、確実とは言えなくて苦笑いさせてしまった。
然程、駅から遠くなかった木葉さんの家から数分。
もう駅は見えてきている。
「俺ね、結構不安なんだよ。オトモダチ枠に入れて、なんて俺の勝手だろ?
オトモダチどころか、知り合いとしても消去されそうじゃん。騙して家に連れ込むような男だし。
だから、最後の一瞬までりらに触れてたい。」
手が震えていた。
駅に着くのを拒むように足の動きが鈍くなる。
いくら拒んでも歩み続ければ着いてしまうもので、もう目の前には改札口。
帰宅ラッシュより前の今の時間は人も少なくて、立ち止まっている私達が通行の迷惑になる事はなさそうだ。
周りを観察して大丈夫そうだから、もう少しだけ、なんて手を離せないでいるのは私の方だ。