第18章 オトモダチ、から
腕を退かして貰う為に手を添える。
嫌な訳じゃないから、断り方が分からない。
「…ごめんなさい。私、帰ります。木葉さんと、出来ません。」
ついてきて、期待させておいて、出来ない。
それについては、謝るしかないのだ。
肩に回っていた腕にあまり力は込もっていなくて、簡単に抜け出せた。
「…うん。知ってた。りらにとって、俺は過去なんだろ。」
木葉さんは、あの時と同じ、苦しそうな顔で笑っている。
「でも、俺はあん時みてぇに逃げたりしねぇし、それで諦めるなら、再会した時に粘りはしねーよ。だから、まだオトモダチ枠の中にでも入れといて。
今のはカッコ悪い男の焦り。だーって、アイツ等のが有利過ぎんじゃん?」
最後の方は冗談でも言うように、ケラケラと笑って立ち上がった。
そして、私の前に差し出された手。
掴んではいけないような気がして目を逸らした。
「駅まで送るよ。そこまでは彼女のフリ続行ってコトで。少しだけ、夢見させて。
駅で別れたら、オトモダチに戻るから。」
それは、木葉さんにとって残酷な事だと思う。
何故、自らそういう選択をするのか分からなかった。
動かない私の手を強引に取って、立たされる。
指先を絡めるように手を繋いで一緒に部屋を出た。
「こんな事をしたら、自分自身が辛くなるんじゃないですか。」
「分かってる。」
手元に視線を落として疑問を投げる。
一言で答えた木葉さんは消えてしまいそうなくらいに儚くて、手を振り払う事は出来なかった。