• テキストサイズ

【HQ】sharing.

第18章 オトモダチ、から


腕を退かして貰う為に手を添える。
嫌な訳じゃないから、断り方が分からない。

「…ごめんなさい。私、帰ります。木葉さんと、出来ません。」

ついてきて、期待させておいて、出来ない。
それについては、謝るしかないのだ。

肩に回っていた腕にあまり力は込もっていなくて、簡単に抜け出せた。

「…うん。知ってた。りらにとって、俺は過去なんだろ。」

木葉さんは、あの時と同じ、苦しそうな顔で笑っている。

「でも、俺はあん時みてぇに逃げたりしねぇし、それで諦めるなら、再会した時に粘りはしねーよ。だから、まだオトモダチ枠の中にでも入れといて。
今のはカッコ悪い男の焦り。だーって、アイツ等のが有利過ぎんじゃん?」

最後の方は冗談でも言うように、ケラケラと笑って立ち上がった。
そして、私の前に差し出された手。
掴んではいけないような気がして目を逸らした。

「駅まで送るよ。そこまでは彼女のフリ続行ってコトで。少しだけ、夢見させて。
駅で別れたら、オトモダチに戻るから。」

それは、木葉さんにとって残酷な事だと思う。
何故、自らそういう選択をするのか分からなかった。

動かない私の手を強引に取って、立たされる。
指先を絡めるように手を繋いで一緒に部屋を出た。

「こんな事をしたら、自分自身が辛くなるんじゃないですか。」
「分かってる。」

手元に視線を落として疑問を投げる。
一言で答えた木葉さんは消えてしまいそうなくらいに儚くて、手を振り払う事は出来なかった。
/ 577ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp