第18章 オトモダチ、から
「ごめんなさい。彼女のフリ、なんて出来なくて。」
「いーよ。俺、分かってたし。あのテのタイプはりらが苦手だろーな、って。」
「じゃあ、何故連れてきたんですか。」
「…りらとデートしたかったんだよ。なんか、理由があったら、一緒に出掛けてくれっかなーって。
ま、彼女に会わせてくれたらーって話を鵜呑みにして付き合わせたのはホント悪かった。ソレで素直に諦めるなら、しつこくはせんわな。」
もう帰るのだし必要ないだろうと、普段の年上相手への対応に戻して話す。
それは気にしてないのか、突っ込みはしなかったけど、木葉さんの方は名前呼びのままだ。
名前、と言えば。
彼女が木葉さんにしつこくした理由もそこにあるような気がした。
「それは木葉さんも良くないですよ。名前にちゃん付けで呼ぶとか、親しい感じがして期待するんじゃないですか。」
「俺が下の名前で呼んでんの、りらだけじゃね?」
「…さっきの子、マキちゃん、って。」
それを言ったら木葉さんは少し考えて、空中に指先で文字を書いた。
「アレ、苗字。シンにキの真木ちゃん。ま、次からは他人行儀に真木さんって呼んでやるけどー。」
空中に書かれた文字は読めなかったけど、言葉の説明がついて納得する。
じゃあ、しつこいのは元来の性格だな。
木葉さん、この先も彼女に苦労させられそうだ。
目を隣の人へと向けると、こちらを見ていた木葉さんと目が合う。
にっ、と歯を見せて笑う仕草は自分が好きになった頃と変わらなくて少し落ち着いた。
「りら、やっぱ帰んの止めて、これからデートしねぇ?時間はあるっしょ?」
昔と変わらない、その笑顔で言われたら断る術はない。
繋いでいた手を握り返す事で、了解を示した。