第18章 オトモダチ、から
少しの間、黙っているとマイクだか何だかを使って喋る声が聞こえる。
どうやら、木葉さんの上司のようで本日の挨拶と自由行動の開始を告げていた。
動けなくなった私を嘲るように笑った、マキちゃんという女は木葉さんの背を押してどこかへ行こうとしている。
そんな場面を見ても、何も言えないなんて本当に弱いまま変わっていない自分に嫌気がさす。
こんな自分なのに、旅行の時、あの男に拒否を告げられたのは何故だろうか。
きっと、それは皆という後ろ楯があったから。
何かあっても、大丈夫だと言ってくれる人がいたから。
言われる前から、大切にされているの、本当は分かっていたから。
だけど、今はいない。
私の中であの人達は本当に特別な存在なのだと、改めて思った。
呪文みたいに皆の名前を心で叫んでも、来てくれる訳ないし、助けてくれる訳もない。
「りら、帰ろっか。」
突然の声と目の前に差し出された手。
それは、頭の中に過った誰のものでもない。
でも、気付いてくれた。
私が今、どうしたいか、言わなくても分かってくれた。
無言のまま手を取って、歩き出す。
後ろから追い掛けてくる足音が聞こえた。
「マキちゃん、あんましつこいと、俺もキレるよ。仕事関係だからキツく言わなかったけど、さ。
俺、アンタみたいな女はキライ。」
振り返りもせず、冷たく言い放った木葉さんの言葉に足音が止まる。
ここまで言えるなら、私なんか本当は来なくて良かったんじゃないか、と思った。