第18章 オトモダチ、から
木葉さんの事情、とは。
最近、アルバイトの高校生に告白をされたらしい。
それは断ったけど、しつこくされて、つい‘彼女がいる’と宣言したようで。
そうしたら、彼女に会わせてくれたら諦めます、となったそうだ。
「…それ、本当は彼女いないってバレてるんじゃないですか。」
『…だよなぁ。』
話を聞いて思った事をそのまま口に出した。
本人も分かってはいたようで、軽い笑い声と共に同意だけ返ってくる。
「木葉さん、女友達なら一杯いるでしょう。何も愛想のない私じゃなくても。これなら勝てる、って思われたらもっとしつこくなりますよ。」
『熊野が良いんだよ。俺が、熊野を連れてきたいの。』
最終的には了解せざるを得ないと分かっていても足掻いてしまう。
初恋の相手の彼女のフリなんかしたくない。
『なぁ、そんな嫌?』
黙ってしまった私に届いた不安そうな声。
電話越しでは届かないような小さい溜め息を吐いた。
嫌なのではない。
怖い、のだ。
一緒にいたら、知って欲しいと思ってしまうから。
そして、皆みたいに私を助けて欲しい、護って欲しい、汚くないって言って欲しいって。
そう、思ってしまうから。
同居人の皆は特殊だって分かっているのに。
木葉さんに、同じ事を求めて、傷付くのが怖いんだ。