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第17章 小旅行


目が覚めた時には、見知った道を移動しているのが分かった。
いつもより、視界が高い気がする。
その上、体が暖かいし、眠るのに心地好い揺れはあるし。
顔を正面に向けると、短い金髪…の後ろ頭。

誰かに背負われているのは予想出来たけど、まさか月島くんだとは。

「起きたなら降りてよ。」
「はい、降ります。寧ろ早く降ろして下さい。」

動き出した私に気付いて不機嫌そうな声がした。
背中から降りて周りを見ても、誰もいない。

「‘今日は彼氏なんだから、ちゃーんと連れて帰ってきてね。’って、さ。」

疑問はすぐに解決したけど、よく怒らなかったな。
月島くんなら嫌がりそうなものだけど。

「りら、疲れてるんじゃない?」

確かに、疲れている。
肉体的にじゃなくて、精神的に。
心配、してくれてるのかな。

「普通、抱えられたりしたら、起きるもんじゃないの?」

違った。
馬鹿にしてるんだ。

言い返す気力は無くて、黙ったままでいると、目の前に差し出された手。

「早く帰らないと、日が暮れるよ。」

意味が分からないでいると手を握られた。

さっき、あんなに嫌がったのに何で。

質問しようと顔を見上げると、微かに耳が赤くなっている。
顔にはあまり出てないけど、照れてるのか。

多分、今何を聞いても照れ隠しでいつもの倍以上の嫌味が返るだろう。
聞くのは止める事にして、わざと歩調を緩める。

木兎さんの時も思っていたけど、私を汚くないって言ってくれる人の温もりは心地好くて。
少しでも長く感じていたかった。
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