第17章 小旅行
何をしたいのかは不明だけど、この人を怒らせるのは止めた方が良いと本能が言っている。
「さっきの発言は怒ってないけど、木兎さんと手を繋いで帰って来たのには怒ってるよ。…りらは俺と付き合ってるんだよね。」
合わせるって、付き合ってる風を装えって事か。
これは聞き耳立ててる皆を喜ばせるだけの展開だと思う。
「…だったら、自分が迎えに来れば良かったんじゃない?」
言われた事に合わせて、普通の返答をする。
上手く、ノれているかは分からない。
問題は普段の言動から付き合ってない事は明白だろう。
そこをどうやって誤魔化す気だろうか。
「俺が行ったらまたからかわれるでしょ。一応、隠してるんだから。
りら、演技は上手いよね。元から淡々としてはいたけど、あれじゃ本当に付き合ってるのか不安にもなるよ。本当に他の人と同じように扱われるとは思ってなかった。」
同じ事を問題として思っていたようで解決策を出してきた。
演技が上手いのは赤葦さんの方だ。
興味をわざと引いているからか、皆が息を潜めているだろう襖が、寄り掛かり過ぎて僅かに鈍い音を立てている。
「まぁ、もうバレただろうけど、ねっ!」
言葉と同時に赤葦さんの回し蹴りが襖に当たった。
とても綺麗なフォームの蹴りで、当然の如く襖は外れて皆が下敷きになっている。
赤葦さんは、更にその襖を上から踏みつけて、身動きが取れないようにしていた。