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第17章 小旅行


目が慣れるまでは動けない。
それは私だけだったようで、赤葦さんはいとも簡単に私の位置を把握して手を掴んできた。
さっきの発言を怒っているのか、何も言わない。

「…あの、すみませんでした。」
「怒ってないんだけど。」

言葉の割には声が若干だけど低くなっている。

「…りらには、ね。」

耳元で小さく言われた事に疑問を持った。

私じゃなければ誰に怒っていると言うのだ。

答えはすぐに分かった。
赤葦さんの後ろ、襖が少しだけ空いていて隙間から縦に光の線が入ってきている。
さっき一度は真っ暗になっていたから、隙間なんか空いている筈はない。

悪ノりして、聞き耳立ててる人がいるんだ。

「ちょっ!木兎、押さないで。気付かれる。」
「だって見えねぇもん。…で、何やってんだ?」
「据え膳食おうとしてるんだろ。」
「りらは食っちゃいけない据え膳だと思いますケド。猛毒入りデショ。」

微かだけど声も聞こえてくる。
月島くんなんか興味なさそうなのに、いるのか。
しかも誰が猛毒だ、誰が。

腹が立つよりは呆れて溜め息が出た。

「少し、合わせて貰える?」

また小さな声で前置きをされた後、抱き締められた。
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