第17章 小旅行
そんな中、唯一何も言わなかった赤葦さんが立ち上がって近付いて来る。
「りら、俺達は巻き込まれる前に寝ようか。行こう。」
私の手を掴んで寝室の方に行こうとした。
前にも、似たような事があった気がする。
あぁ、黒尾さんのシャツを着せられた、彼シャツ(正式にはイトコの元カレのシャツ)の時だ。
こういう、萌えみたいな格好が好きなんだろうか。
なんと言うんだっけ。
普段は興味なさそうなのに、実はこういう事を悶々と考える人。
あ、そうだ、思い出した。
「赤葦さんってムッツリですか?」
普段なら飲み込むだろう思った事が、珍しくそのまま口から出る。
タイミングが良いのか悪いのか、説教の声の隙間だったようで、言葉が部屋の中に響いた。
「…赤葦さんに限ってそんな事ないんじゃない?」
「ツッキー、夢見すぎだろ。赤葦だって男なんだぜ?色気のある女見たら、あんなコトやこんなコトしてぇに決まってんだろ?」
月島くんが現実逃避するように宙を眺めている。
それに突っ込んだ黒尾さんは指先をいやらしく動かしていた。
その行動を見てきとりちゃんが黒尾さんを叩いている。
木兎さんはただ大きな声でゲラゲラと下品に笑っている。
相変わらず、酒が入るとカオスだな。
本格的に巻き込まれない内に逃げようと、寝室に入った。
すぐ後ろから、赤葦さんも入ってきて、後ろ手で襖を閉める。
電気が点いていなかったこの部屋は、仕切られてしまった事で真っ暗になった。