第17章 小旅行
怒っている彼女に話し掛けるのは、更に燃え上がらせるのを分かっていた他の人達は、喋り始めた私を驚いた顔で見ている。
対して、今まで怒鳴り続けていたきとりちゃんは一瞬で冷静になったかのように怒鳴るのを止めた。
「…廊下で、アンタとすれ違った男が何か言った時から。アレで目ぇ覚めた。」
そこからか。
その時点から目が覚めていたなら黒尾さんは気付いてたな。
その黒尾さんの差し金かも知れないけど、元から感情で動くタイプで、お酒も入っていたのに、よく冷静に考えて、寝たフリなんか出来たものだ。
「じゃあ…今、怒鳴ってたのは騒がしくしたからじゃないよね。」
「まぁ、八つ当たりもある。」
「…そ。なら、謝って。私じゃなくて、そっち三人に。」
怒りの原因は私に関わっているものなのだから、私が怒鳴られるのは仕方ない。
けど、自分で八つ当たりといえる程のものを、他の人にぶつけたのは許せなかった。
笑顔すら作れない程の不機嫌さで、睨むようにきとりちゃんの顔を見る。
「アンタ、顔怖いよ。…分かった。私が悪かった。八つ当たりしてゴメンナサイ。」
投げやりな感はあったものの謝罪を口にしたのを聞いて、正座をしていた足を崩した。