第17章 小旅行
木兎さんやきとりちゃんの悪ふざけさえなければ、悪ノりはあまりしない黒尾さん。
元々、騒がしくするタイプじゃなく、寧ろ止める方の赤葦さん。
時には嫌味で煽りはするけど、騒ぐことには縁遠い月島くん。
巻き込まれる事は多々あれど、面倒臭くて喋るのすら苦手な私。
酔って寝ている人を起こす程の騒ぎ方をした気はしない。
五月蝿かったのなんて、皆が笑いだした頃からくらいだし、寝起きが悪いきとりちゃんが、それくらいで、いきなりここまで怒るだろうか。
彼女だって馬鹿ではない訳で、自分が怒鳴る声の方が大きいのは分かっているだろう。
それを、抑えきれないほどの怒りが、眠りを妨げただけの事だとは思えない。
考えられるのは一つ。
初めから寝ていない状態で、話を聞いていた。
勿論、知り合いがこの旅館にいた事も、全部。
それはそれで、件の話が出た時にキレなかった事が疑問として残る。
色々と考えている間も説教は続いていたけど、言葉なんか耳に入ってきていない。
気になる事もあったし、言われっぱなしで苛々し始めている人もいるし、そろそろ本当に苦情がきそうだ。
止めようにも、問題は何と言うかで。
言い訳みたいな始め方をしたら、もっと怒るのは目に見えている。
「…あの、さ。きとりちゃん、ドコから聞いてた?」
未だ怒鳴り続けるその人に、話を聞いていた前提での問い掛けをした。