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第17章 小旅行


静かな部屋の中で、黒尾さんが動く。
私の後ろにわざわざ来て座り直した。
腹に腕を回されて、抱き締められる。

意味が分からない。

離れようと腕を掴んでも、放そうとはしてくれない。

黒尾さんの腕と格闘していると、頭に何かが乗るような感触。
それは、何度か頭を往復している。
感触の元を視線で辿ると赤葦さんで、撫でられているのが分かった。

意味が分からない。

その手を止めてやろうと黒尾さんの腕から手を放す。
すぐに、暖かい何かに手が包まれた。
いや、これは流石に分かった。
何か、じゃなくて、手だ。
月島くんに、手を握られている。

意味が…以下略。

何でこんな状態になってるんだ。

普段は、特に月島くんとか、無駄に触れてくる事はないのに。
軽く混乱してきた。

視線を動かして皆の様子を伺おうとしていると、月島くんと目が合った。

「…何ヵ月一緒に暮らしてると思ってるの?りら、顔には出ないけど分かりやすいよ。」
「月島は、たまには甘えていいよって言ってるんだよ。」

含みのある言い方をした月島くんの言葉を赤葦さんが通訳してくれる。
そんなに、傷付いている顔をしていたのだろうか。

確かに、あの男を見られた事で、自分の汚い部分を曝された気分にはなっている。
だからこそ、逆に触れては欲しくない。
この人達まで、汚れてしまいそうな気がする。

体を捩って黒尾さんの腕から抜け出した。
月島くんに握られていた手も振り払って三人から離れる。

「結構です。」

こういう時に限って、言葉を選んだりする事は出来ず、ただ断りだけを告げた。
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