第17章 小旅行
本当に広い、この客室は高級ホテルでいう所の、スイートクラスのようで。
来た時に座っていたテーブルのある部屋以外にも、ちゃんと寝室として広い畳の部屋があった。
そこにはすでに布団が敷かれている。
三つずつ並んでいて、枕は中央側に置かれていた。
先に潰れた二人を寝かせてしまうと、テーブルのある部屋に戻る。
潰れなかった人達は、まだ眠くはないようで話をするでもなくテーブルを囲んで座っていた。
私が座ると、三人ともが私を見る。
「…りら、言う事あるよね。」
「僕達に隠し事しようなんて、百年早いよ。」
数秒の間の後に、赤葦さんが言った。
すぐに月島くんがニッコリと怖い笑顔で畳み掛けてくる。
意味が分からずに黙っていると、三人揃って溜め息。
「…アイツ、誰?」
黒尾さんに言われてやっと意味を理解した。
聞こえてた癖に、この人達は平然としていたのか。
何に演技力発揮してるんだよ、全く。
まぁ、きとりちゃんが聞いていなかっただけマシか。
聞こえていたら、激昂して暴れかねない。
「兄弟子です。…これだけで、理解して下さいね。」
言わないで誤魔化しきれる自信はない。
かと言って、詳しく話したくもないから、表面上の関係だけを伝える事にした。
この三人は、潰れた二人よりも頭が働くだろうし、与える情報はこれだけで充分。
聞く前から三人も薄々は分かっていたようで、それ以上は何も問い掛けてはこなかった。