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第17章 小旅行


その後も宴会は続き、気付くときとりちゃんが潰れている。
やっと起きている、くらいの状態で頭がゆらゆらと揺れていた。

「…限界。誰か肩貸して…。部屋帰ろう。」

テーブルに手を付いて立ち上がったその人の発言でお開きになった。

きとりちゃんには黒尾さんが肩を貸し先に部屋を出ていく。
続いて出ようとした時、きとりちゃんと同じくらい酔っている木兎さんは何故か私に抱き付いてきた。
なんとか転ばずに保って、肩を貸すように腰に腕を回して支えようとしたけど、体格差もあるし、支えきれる訳はない。
すぐに無理だと気付いて赤葦さんに交代して貰い、部屋を後にした。

先に出ていた二人も廊下の方で待ってくれていて、六人揃って客室に戻っていく最中。
前方から、人が歩いてくるのが見えた。
白衣を着ていて、格好だけで料理人なのだろうと分かる。
裏方の人が客の目につく場所にいていいのか、と思いながら横を通り過ぎようとした時だった。

「相変わらず、男はべらせてんだね。熊野ちゃん。」

聞こえた声にゾッとして、白衣の男の顔を見る。
前の職場にいた、知り合いだった。

「りら、早く行くよ。」

立ち止まってしまった私を動かしたのは月島くんの声。

この様子だと、幸いにも男の声は私以外に聞こえていなかったようだ。

小さく安堵の息を吐いて月島くんに並び、部屋に戻った。
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