第17章 小旅行
目的地の襖を開けると、先に着いていたきとりちゃんが畳の上に座っていた。
せめて、テーブル脇の座布団に座っていれば良いのに、なんでこんなに雑なんだ。
「あ、なんだ。結局、皆一緒に来たんだ。もうちょっと、女の子に捕まっててくれたら良かったのに。」
「女より飯だろ!早く食おうぜ。」
「色気より食い気っスか。」
言葉に反応した木兎さんや突っ込みを入れた赤葦さんを無視して、きとりちゃんは残念そうに口を尖らせ、立ち上がると私の手を引く。
「ヤキモチ妬いてるりら、可愛かったのに。」
顔を近付けて囁くような声。
完全に私をからかうつもりのようだけど、認めてしまった後では面白い反応など出来ない。
表情も変えなかった私を不満そうに見て、手を離すとテーブルに近付いていった。
「…さて、席順だけど。りらはドコ座る?アンタの隣、賭けるから。」
あ、またそのパターンですか。
別に隣に座ったくらいで、何か得がある訳でもないのに、勝負事が好きな人達はノっちゃうんだよね。
こういうの、興味が無くてマイペースな月島くんは先に席を決めて座っていた。
「僕はココにするんで。後は勝手にドーゾ。」
襖(出入口)から見て、一番奥の席。
「月島くん、そこは上座。私達は年下だから、こっち。」
「別に関係ないデショ。」
手招きしてこちらに呼ぼうとしたけど、拒否された。
本音を言うと、無駄に触ろうとしない月島くんが一番楽だから、隣に来て貰いたい。
口に出したら、また変な誤解が生まれるから言わないけど。
自分は下座に座って、毎回の事ながら不毛なじゃんけん大会が始まったのを見守った。