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第17章 小旅行


ただ時間が過ぎていくのを待つのは思ったよりも退屈で、テーブルに肘を付いて眠ってしまったらしい。
夕食の時間になって、起こされるまでぐっすりと寝ていた。

旅館に備えられた食事処に歩いていく途中、何故か主に女性に声を掛けられている皆さん。
道を聞かれたり、写真を頼まれたりしていた。
どっちも、仲居さんとかいるんだから、同じ客であるこの人達に頼まなくても良い訳で。
親切に対応している姿を見ると無性に腹が立った。

「私、先に行きますね。」

見ていると、苛々が増すだろうと声を掛けて先を歩く。
きとりちゃんだけは、私を追い掛けてきた。

「…りら、妬いたでしょ。」
「…何を。」
「ヤキモチ。」

思考がピタりと止まった。
別に、って返せば良いのに、間を空けてしまった後では遅い。

「図星だ。ま、アンタの場合は恋愛感情とかっていうより、アイツ等は自分のモノ、みたいな独占欲的なヤツだろうけどね。」

思考と共に足も止まっていた私を追い抜かして、きとりちゃんは先に行ってしまった。

いや、独占欲って有り得ないでしょ。
勘違いも甚だしい。
私には彼等を独占する権利がない。
それに、きとりちゃんと仲良くしているのを見ても、こんなに苛々しない。

でも、他の女の子と話しているのは見ていたくない。
ちょっとした、物の受け渡しであっても肌が触れ合っているのとか、嫌だと思う。

「…あ、そっか。これが嫉妬、なのか。」

小さく独り言を呟いた。

確かに、皆の事は人間として好きで。
構ってくれたり、優しくしてくれたり、傍にいてくれるのが嬉しい。
たまに悪ノりをして、やたら触ってきたり、悪戯をされるのは勘弁して欲しい所だけど。
他の人には、この関係を邪魔されたくない。

彼女が出来るのを嫌とか駄目とかは思わないし、あくまで、同居人としての独占欲だろう。
私の見てない所でなら、勝手にやって貰って構わないのだし。

言葉に出した事で納得していると、後ろから数人分の足音。
気恥ずかしくて振り返る事も出来ず、少しだけ早歩きで数歩先を歩いていった。
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