第17章 小旅行
「熊野様、お待ちしておりました。いつものお部屋をご用意しておりますので、どうぞ。」
「お久し振りです。今回は六人だけど、大丈夫ですよね?」
「はい、そのように支度させて頂いてます。」
挨拶をしてきた女将らしき人ときとりちゃんは慣れた様子で会話している。
そのまま、案内されて着いた部屋は露天風呂付きの広い部屋。
「毎回、こんな高そうな部屋来てるんだ。」
「…な、俺も初めて来た時はビビった。」
つい、漏れた本音を拾ってくれた黒尾さん。
多分、きとりちゃんとは一番付き合いが長いだろうこの人は、この場所に来るの何回目なんだろう。
考えても仕方がない事を考えながら、テーブルの脇に座った。
相変わらずの年上組の三人は、窓からの景色を眺めてはしゃいだりしている。
身を乗り出しているのを止めたりしているのは赤葦さんで、呆れた様子でそれを見ているのは月島くん。
特にやる事もないまま、時間だけが過ぎていく。
確かに遠出をしている訳だけど、日帰り出来ない距離じゃないし、わざわざ部屋まで用意しておく意味は分からない。
このまま泊まりになるんだろうな、なんてぼーっとしながら考えていた。