第16章 一緒に寝よう
月島くんとは反対側、布団に入ってきた人を見て驚く。
なんで、裸なの、この人。
下は履いてるから全裸ではないけど、その格好で隣に来ないでよ。
「…何で脱いでるんですか。」
「寝る時は裸族なんだよ。」
会話をしながら、さりげなく私を引き寄せるように腰に腕を回してくる。
「赤葦、それヤバい。」
「何がっスか?」
「事後感あるわ!」
突っ込みを入れてきた黒尾さんと話を始めてしまった。
眠る気配は、少しもない。
あの、私は眠いんですけど。
あれ、そういえば木兎さんは?
こんな時、一番騒ぎそうな人の声が聞こえない事に不安を感じる。
ふっと視界に影が落ちた。
それと同時に体中に重みを感じる。
「俺もりらちゃんと寝るぅー!」
掛け布団の上から木兎さんにのし掛かられていた。
それは両隣の二人にも及んでいる。
ただでさえ、三人も入れる訳がない布団に入っていて、更に上から乗っかられるなんて拷問だ。
「ちょっ!重っ!」
「木兎さん、りらが潰れます。退いて下さい。」
横の二人が布団越しに蹴ったりしながら応戦しているけど、効き目はないようだ。
狭いし、重いし、眠気による苛つきは頂点に達した。
「…木兎さん。退かないとココ、蹴り飛ばしますよ。」
にっこり笑いながら膝を立てて男性の大事な部分を示す。
木兎さんは本気だと読み取ったのか、あっさりと退いてくれた。
「普段は空気が読めないのに、これは分かって頂けたんですね。有難うございます。」
たっぷりと嫌味を込めて言うと、落ち込んだのかしゃがんで下を向いているのが見える。
そんなものは無視をして、両隣の二人も退けようと手探りで木兎さんに示したのと同じ部分を掴んだ。
「捻り切りますよ。退いて下さいね。」
手に力を込めて強く握ると、二人もあっさりと布団から出ていく。
「きとりちゃん、枕。」
「あぁ…どうぞ。」
今までの経緯から私の機嫌を悟って、慌てたように枕を差し出された。
「私は寝るので。勝者が決まるか分からないですけど、隣に入るなら覚悟して下さいね。お休みなさい。」
枕を頭の下に入れて挨拶をすると目を閉じた。