第16章 一緒に寝よう
赤葦さんの反応はなく、首を傾けていると、静かに立ち上がって近付いてくる。
「きとりさん、やっぱり部屋で寝ます。…りらも、おいで。」
私の横を通り過ぎるのかと思いきや、腕を掴まれて力のまま後ろに一歩下がった。
振り払おうとする前に何かが飛んできて、上手く赤葦さんの後ろ頭に当たる。
赤葦さんに当たった事で勢いを無くして床に落ちた物は枕。
「赤葦クーン。抜け駆け禁止デース。」
「…黒尾さん、りらに当たったらどうするんスか。」
私を離して枕を拾った赤葦さんの顔は完全に怒っている。
枕のカバーが破れてしまいそうなくらい強く掴んでいるのが分かった。
布団の方を振り返ると同時に投げられたそれはきとりちゃんにヒットした。
「あーかーあーしー!アンタ、セッターならコントロールしなさいよ!」
「これ、バレーじゃないっスよ。」
きとりちゃんが投げ返してきた枕を避けて、赤葦さんが言い返している。
また枕を拾って、今度は投げずに手元で揉んだりしながら遊んでいた。
「勝負しましょう。俺が勝ったらりらを連れてく…ぶっ。」
「「ウェーイ!」」
人を賞品にした勝負事を持ち掛けた赤葦さんの顔に枕。
布団側の二人はハイタッチしている。
「…俺、今なら人を殺せる気がします。」
二つ目の枕を拾いながら、ポツリと呟いた言葉には本物の殺意が籠っていた。