第16章 一緒に寝よう
そういうものに限って的中するのは、私の中で当たり前である。
戻った黒尾さんから渡されたのは、長袖のシャツ。
大きさから見て、絶対に黒尾さんの物だ。
これを着ろと言いたいのか、と口には出さずにきとりちゃんの顔を見る。
「彼シャツってどんな感じかなーって思って。」
「じゃあ自分が着ればいいでしょ?」
「私が着たら見れないでしょ。それに、彼シャツの女の子と他の男押し退けて一緒に寝るとか、ちょっと優越感に浸れていいじゃない?」
「…良くない。」
持ってきた、という事は黒尾さんも着せたい訳で、助けを求めるのは無駄だろう。
赤葦さんが助けてくれないだろうか、と視線を移動させる。
「…黒尾さんの、嫌みたいですよ。俺の貸します。」
意図に気付いてくれたようで安心したのも一瞬だけだった。
「あのね、彼シャツって彼氏の服に着られてる感のあるブカブカなのが良い訳であって。私、流石にきとりちゃん程じゃないけど背はあるし、そこまで期待されても。
まぁまず、彼氏のシャツどころか、イトコの元カレのシャツ、ってそれだけで微妙なものだし。」
「りら、萌えについてそこまで語らなくても。クロが嫌なら赤葦のでいいじゃない。」
「どっちであろうが嫌。」
「この場で無理矢理お着替え、をお望み?」
拒否するか試されているのだろうかと思って抵抗してみたけど、これは本気の目だ。
男二人も、酔っ払ってノってしまっているから頼りにならない。
これ以上、相手をして疲れるのも嫌だからリビングを出ていった。