第15章 ゲーム
木兎さんが私の前に座って期待に満ちた目を向けている。
小さく息を吐いて膝を跨いで座ると、チョコレートが付いた方を口に入れられた。
逃げられないようになのか腰に腕を回されて、反対側から木兎さんがお菓子を食べ始めると顔が近付く。
このままだと、本当にキスしてしまいそうだ。
別にするのは構わない。
だけど、意味の分からない予行練習とか言って強引にこんな事させられて腹が立つ。
ゲームだから良い、とか、断れないノリがある、とか、やっぱり納得出来ない。
キスになる前にお菓子を折ってしまおうと、顔を傾けた時、繋いでいた手が引っ張られた。
私が故意にやらずとも、唇が触れ合う前にお菓子が折れて、顔が離れる。
「黒尾!なんで邪魔すんだよ!」
「手ぇ繋いでんだから、俺が動いたらりらも動いちまうのは仕方ねぇだろ。」
口元に残った物を飲み込んでから抗議している木兎さん。
黒尾さんは飄々として返してるけど、タイミング的に絶対わざとだ。
やり直し、とか言われないかと危惧して王様である赤葦さんを見た。
「りら、木兎さんから降りていいよ。…そろそろ一時間経つから、手も離して良いんじゃないかな。」
キスまではいかなくても、命令実行にはなったようで安心した。
膝で腰を浮かせて木兎さんの上から降りる。
時計を見ると、確かに手を繋ぐ時間は終わっていたので握る力を緩めた。
「さて、私と黒尾さんの命令も終わった事ですし、次でラストにしますか。」
「俺まだ王様やってねぇんだけど。」
「運次第では、最後の王様になれますよ。」
「なるまでやるからな。」
終わらせようとしたのに、唯一命令をしていない黒尾さんが文句を言い始める。
少しの間、言い合ったけど、どうせ明日も予定はないし、周りも止めないのは嫌じゃないんだろうし、私が折れるしかなかった。