第15章 ゲーム
またカードを引いて、お馴染みのセリフ。
「お!また俺ー!」
木兎さんが見せびらかすようにカードを掲げる。
ババ抜きと最初で運を使い果たしたようで、王様(ジョーカー)は私の手に回ってこない。
「じゃー、氷を口移し。3から1に。」
キスに限りなく近い命令がきた。
まぁ、私の番号はさっきと同じ4なので関係がないけど。
「私、1。」
「俺、3。」
数字のカードを出した二人は、凄く嫌そうだ。
うわ、黒尾さんときとりちゃんなんて、気まずいペア。
「こんなんで、アンタとキスする羽目になるとは…。あ、手は繋いだままで良いよ。私が寄るから。」
そう言ってキッチンから氷を取ってくると、私達の目の前に膝を付くきとりちゃん。
黒尾さんの口に氷を挟ませて顔を近付けていった。
こんな至近距離で、しかも親戚の元カップルのキスなんか見たくない。
大袈裟なくらい顔を背けて終わるのを待った。
「…ん。…センパイ、口ちっさいんだから、もうちょい小さいの取ってくりゃ良かったんじゃね?」
「…小さいのだと、マジで唇くっついちゃうじゃん。」
氷を噛み砕くような音と、喋る声で終わったのだと判断して顔を戻す。
確かに命令は実行された後だったけど、二人の顔はまだ近い。
この状況、心臓に悪いんだけど。
「やっぱ黒尾ズリィ!さっきから黒尾ばっか女相手に当たってんじゃん。」
「だから、初めの相手は木兎さんでしたって。」
「赤葦、それは忘れさせて、マジで。」
周りの野次によって、目の前の二人は離れた。
次のゲームくらいで、多分普通にキスとかになりそうだ。
命令被弾率の高い黒尾さんを可哀想だとか思っている場合じゃない。
王様を引きたい、と思っていると外れるもので。
三回連続で同じ数字を引くのもどうかと思うけど、結果は変わらない。
王様は…。
黙ってカードを見せている、赤葦さんだった。