第15章 ゲーム
ゲームが始まる。
最初から残り枚数が一枚の私が引かれる側だと一瞬で終わってしまうので、始めに引く事になった。
隣の赤葦さんのカードに手を伸ばして迷いもせずに一枚引く。
私の手の内はジョーカーで、揃う訳はないし、どれを引いても同じだ。
あまりにも、あっさりとした引き方に皆は驚いたようだった。
続いてカードを引く作業が繰り返されていく。
順番が回って、私のカードが引かれる時が来た。
ジョーカーがある以上、これを引かせなければ私は終われない。
赤葦さんと反対隣の木兎さんにカードを差し出した。
二枚しかないから、さっさと決めればいいのに、両方を交互に触って私の顔を眺めている。
私の顔色を伺おうという努力は認めるが、表情が変わる事は無かった。
最終的には、きとりちゃんがふざけてカウントダウンを始めた時に慌てて一枚を引いていく。
「…うっ!ぐ…。」
「…有難うございます。」
引いてしまったものがバレないようになのか、木兎さんは必死に声を堪えている。
運良くジョーカーが手から離れ、周りに聞こえる声でお礼を言った。
「…え。もしかして、りらの始めの一枚って…。」
「ジョーカーでしたけど。」
いとも簡単に、中身を明かして、続いてカードを引こうと赤葦さんの方へ手を伸ばした。
迷った所で意味はないので、さっと一枚抜く。
「…あ。」
私がカードを見る前に赤葦さんから発された驚いた声。
自分の方にカードを向けると、揃っていた。
赤葦さん、きっと私が一巡目に引いたカードを覚えていた。
だから、私の持っていた数字を知っていた。
考えもせずに抜いたカードが同じ数字だったから、驚いたんだろう。
「…あがり、です。」
揃ったカードを見せてから置き、その後も続くババ抜きを見守った。