第15章 ゲーム
きとりちゃんは先日の事を知らない訳で、私と月島くんの関係よりもそっちに興味がいったようだ。
この間の一件を、皆で話している内に出来た何種類かのつまみを持ってリビングに戻った。
先に飲み始めている人に混ざって、缶に口を付ける。
私が来てから会話がなくなってしまった。
「…よし!じゃあ、トランプでもやろっか。」
重い空気を割った、なんとも軽い言葉と手を叩く音。
なんで今そんな事を…なんて思っても、すぐ行動するきとりちゃんは止まらない。
「トランプ!?じゃあ、ババ抜きしよーぜ!」
約一名、相変わらず空気が読めない木兎さん以外は唖然としていた。
テレビ台に入っていたトランプを取ってきたきとりちゃんが、すでにカードをきり始めている。
「僕は明日も朝からバイトなんで、失礼します。」
「…あら、いいの?不戦敗で。ババ抜き一回やったら王様ゲームするし、彼女が誰かに取られちゃうかもよ?」
早々に逃げ出そうとする月島くんをきとりちゃんは、にっこりと笑って見上げていた。
「別に彼女じゃないんで。…失礼します。」
負けじとにっこりと笑顔で返した月島くんが、リビングから出ていく。
私も逃げようと立ち上がった。