第15章 ゲーム
もう夕食も終わり、皆がバラバラに行動していた夜。
一人だけリビングに残って、翌日の朝食の仕込みをしていた所で聞こえた玄関が開く音。
もう皆は帰ってきていて家の中にいる筈で、最後に帰った人が鍵を閉め忘れたのかと恨んだ。
リビングに近付く足音。
泥棒とかだったら私一人で対処出来る訳ないのは分かっている。
まぁ、大声を出したら誰かしら来るだろうから問題はないけど。
立ち上がり、見つめていた扉が開いて、姿を現したのは、ここにはいない筈の人で。
一瞬、固まった。
「…りら、幽霊でもみたような顔しないでよ。」
久々に見る顔も、聞く声も、前と変わらない。
安心して腰が抜けてその場に座り込んだ。
「…きとりちゃん。」
やっと出せた声は、その人を呼ぶだけで留まり、迎えの言葉は出ない。
「いつまで座り込んでんの。ほら、立って。」
差し出された手を握り、立ち上がった。
「なんで?」
「休み貰って帰ってきた。…命日近いし。」
当たり前のように口から零れた疑問に、すぐ答えが帰る。
私だって親戚だから知っていた事で、忘れていたのを悔やんだ。
わざわざ口に出すのは、きっとまだ辛いと思う。
察してあげなきゃならなかった。