第14章 苦手
その内に月島くんも帰ってきて、リビング側からは普通の話し声が聞こえている。
雨はまだ止まない。
雷も続いている。
突然、ドンっと大きな音がした。
驚きはしたけど、怖くはない。
ただ、問題は…今ので停電が発生した事だ。
雷は平気、だけど停電は駄目なんだ。
単純に暗い所が嫌なんじゃない。
いつ回復するか分からない不安感が苦手。
色々と込み上げてきて、持っていた包丁を手から離す事すら出来ず、その場でしゃがみこんだ。
「今のデカかったな!絶対、近くに落ちただろ。」
「雷の感想よりも停電してる事を気にして下さーい。」
「このタイミングじゃ、ブレーカーじゃねぇよな。まぁ一応、見に行ってくるわ。」
「スマホのライト使います?」
「お、サンキュ。」
カウンターを挟んだ向こう側で話し声がしているけど、それどころではない。
どうせ、目を閉じておけば同じ暗闇だと強めに目を閉じた。
こういう時間は長く感じる。
落ち着こうと何回も心で、落ち着け自分、とか唱えているけど、そんな事をしている時点で落ち着けていない。
そして数分後、衝撃的な言葉が聞こえた。
「近くで断線したってよ。」
「それだと、復旧にはまだ掛かりますね。雨も止まないし。」
「暗いのは大丈夫だけど、クーラーねぇのキツい。」
問題はクーラーよりも暗闇だよ。
こんな時に快適さ求めないでよ。
突っ込みたいけど、声を出す事すら出来ない。
ここまで、怖い思いをするとは予想外だ。
「…あれ、そういや…りらは?」
「まさか、雷'は'って…。」
自分の名前が話にあがって、体をリビング側に向けた。