第14章 苦手
どう答えようか迷っていると、キッチンの方からコーヒーの匂い。
いつの間に移動したのか、赤葦さんがインスタントのコーヒーをカップに入れていた。
それを持って戻って来ると私の目の前に置く。
「お酒、飲んでるのでいりません。」
ただでさえ、苦手なものを他の飲み物がある時に口にする訳がなかった。
口には出さずに匂いから遠ざかるよう顔を背ける。
「りらの苦手なもの、だよね。」
聞こえる声には確認というよりは確信していて、何故知っているのか気になった。
「何で分かりました?」
「前に、飲むか聞いた時に自分で言ったよね。」
「…あぁ。」
この家に来たばかりの頃の事を思い出す。
確かに言った。
「僕も苦手なもの知ってるよ。りらは苺が駄目デショ。と言うか、フルーツ全般苦手じゃない?」
月島くんが口を挟んでくる。
図星だけど、これは思い出してみても言った覚えもないし、行動に出した気もしない。
「なんで、そう思うの。」
「前にバイキング行った時、フルーツを使ったものは一つも取ってなかったから。普段の食事も、デザートで出してくれるけど、フルーツには手を付けないし。
後はお酒の好みで。僕達くらいの歳だとさ、甘くて飲みやすいフルーツを使ったカクテルとか好きだと思うんだよね。でも、りらはいつも焼酎だし。」
つらつらと並べられる言葉に、否定出来なくなってしまう。
現に今、飲んでいるのも缶のものだけど焼酎…ウーロンハイである。
悔し紛れに無視をして、缶の中身を飲み干した。