第14章 苦手
私の放った一言にダメージを受けたようで、皆も黙って食事を続ける。
黙々と進んだ夕食は早めに終わって、片付けをしていると、また、ヤツが出た。
一日に二回も見るなんて、ついてない。
無言のままスリッパを履いた足で踏み付けた。
思ったよりも大きな音が出てしまって、皆がカウンター越しにこちらを覗いている。
私が足を上げた途端に見えただろう、潰れたそれに気付いてティッシュを箱ごと誰かが投げてきた。
「もう動きませんよ。それを取るのすら出来ないんですか、あなた方は。」
呆れた息を吐いてティッシュで包み、すぐに捨てる。
スリッパの裏も綺麗に拭いてしまうと、何事も無かったかのように片付けを終わらせた。
食事の後は大体いつも皆は自由に行動しているのに、何故かリビングに揃ったまま。
頼りない、情けない姿を見た後では相手をする気にもならず、冷蔵庫から缶のアルコール飲料を取り出してリビング側に移動した。
無視をするように一人で飲んでいると、私に集まっている視線。
何か聞きたい事でもあるのかと顔を向けた。
「りらって苦手なモンとかねぇの?」
「食べ物も好き嫌いねーだろ?りらちゃん、怖いものあんのか?」
私の弱味でも握りたいのか、興味津々と言った感じで問い掛けられる。
苦手なもの、嫌いなものは普通の女性並み…どころか多い方だと思う。
食べ物だって食べられない訳ではないけど嫌いなものはある。
怖いことだって勿論あって、想像するだけで涙が出そうにすらなる。
ただ、元からの無表情と淡々とした喋り方で気付かれにくいだけだ。