第14章 苦手
ある時、珍しく皆が揃っての食事の最中。
そいつは現れた。
暑い季節の台所によく出る、黒いアレ。
勿論、私も人並みに苦手な訳だけど。
「ぎゃー!こっち来た!赤葦なんとかして!」
「…ちょっ!木兎さん!俺を押さないで下さい!」
「黒尾さん、ネコなんだから捕まえて下さいよ。素手で。」
「ザケんな!素手は無理!スプレーどこだよ!?」
周りの人達はもっと苦手だったようで。
ぎゃあぎゃあ騒ぐだけで頼りない男共だな、全く。
カウンターに置いていた布巾を手に取り、それに近付く。
動きが止まった時を狙って布巾で叩き潰した。
生きていたら嫌なので思い切り布地を握り締め、床から布巾ごと手を離す。
中身を確認する勇気はないけど、大丈夫そうだったので、そのまま丸めて捨てた。
「りらちゃん…強ぇー!」
黙って退治をやり遂げた私を見て、皆は拍手している。
「私が強いんじゃなくて皆さんが情けないだけです。」
手を洗って自分の席に戻ると平然としたまま、食事を再開した。